気を使わせたくない人たち

音街ウナとタカハシ、胃腸
一時間で書き切るものだったので誤字脱字、誤変換、変なところも残したままです

 胃腸が荒れるから辛いものは苦手なタカハシくんが激辛ラーメンのお店に並んでいるのを見た時、何があったのか気になった。
 だってカレーも甘口、味変に七味なんてもってのほか、中華も甘いものばっかな彼が激辛ラーメン。
 ほんとに不思議で思わずじっと見つめていると視線に気付いたのかタカハシくんがこっちを見た。軽く手を振る彼のもとに駆け足で向かう。

「こんにちは、ウナちゃん。学校帰り?」
「うん、タカハシくんは……」

 不思議そうにしている私の顔で何を言わんとしているのかわかったのかタカハシくんは、困ったように笑いながら頬を掻いた。ますます不思議に思う。やっぱり自主的に来たという感じではない。

「あー…ちょっと、罰ゲームで」

 観念したように彼は言う。

「罰ゲーム?」
「うん。ここの激辛ラーメンって丼の底に、ゲキカラ完食って書かれてるんだよ。その写真を撮るって罰ゲーム」
「大変だね」
「まぁ、負けた僕が悪いし」

 そう言いながら彼はお腹をさすっている。食べる前からお腹がもう荒れているようだ。

「……食べれるの?」
「……正直、無理かも。でも、頑張るよ」

 そういう顔にはあまりにも悲壮感が漂っていて大丈夫だろうかと心配になってしまう。このまま放って置いたらタカハシくんはトイレの住人になっちゃうんじゃないだろうか。
 でも、やめなよと言っても聞かなそうなのがタカハシくんだ。うーん、と悩んでいると前の人が詰めて、あともうちょっとでお店に入れるようになっていた。すると店員さんがこっちへとやってくる。

「お客さま! 先にご注文を伺ってもいいですか?」
「あー、ゲキカラ一つ」

 タカハシくんが、少し躊躇しながら注文をする。すると店員さんはこっちを向いた。

「はい! そちらのお嬢さんは」

 タカハシくんと揃ってポカンとした後そういうことかと理解する。じゃあ、そうすればいいや。

「あ、その子は……」
「醤油ラーメン一つ!」

 タカハシ君が言い切る前に注文をする。

「う、ウナちゃん?」
「かしこまりましたー!
「ウナ、今日午前中授業だったからお腹空いてるの、お金あるしいいでしょ? タカハシくん」

 そういうとタカハシくんは困ったような顔をする。が。

「まぁ、もう注文しちゃったしね」
「わーい。ありがとう」

 そんなやりとりをしていると前のお客さんが中に入って、私たちは1番銭湯になる。

「もうすぐでラーメンだねえ」
「そうだね。……ここからでも、いい匂いがするねえ」

 そうは言っているが、タカハシくんの顔は明らかに「でも僕が食べるのは激辛ラーメンなんだよな」と悲しんでいる。大丈夫だよ……タカハシくん。タカハシくんの胃腸とお尻はウナが守るから。口には出さずに視線でそう伝えるとタカハシくんは不思議そうな顔をしている。

「次のお客さま~!」
「あ、じゃあはいろっかウナちゃん」
「うん!」

 案内されたのはカウンター席だ。背の高い椅子に、少し苦戦しながらも座るとタカハシくんがお水を注いでいたくれた。

「ありがとう、タカハシくん」
「どういたしまして」

 すでに準備していたからだろうか、店員さんがラーメンの器を持ってこっちにやってくる。

「えー、ゲキカラのお客さま」
「はい!」

 ここで少し食い気味に返事をした。明らかにタカハシくんが戸惑っている姿が見えたが。店員さんは気にせずに目の前にラーメンを置く。

「ありがとうございます!」

 そんなことを言っているとタカハシくんの方に醤油ラーメンが置かれる。

「じゃあ、いただきます!」
「え、あ、ウナちゃん?」

 話しかけてくるタカハシくんの声を無視して割り箸を割り、蓮華を持ち口をつけた。あ、大丈夫そう。そう思ってすぐに絡みがゆっくりとやってくる。舌が焼けるような痛み。思わずむせた。

「ちょっ!? う、ウナちゃん!?」

 タカハシ君が背中をさすっているのがわかった。

「か、からーい」

 少し涙目になってしまう。

「そりゃそうだよ、ほらお水飲んで」

 そういってさっき注いだお水を渡してくれるが、それを手で押す返す。

「いいの、ウナが勝手にこれ食べたいって思ったからやってるの」
「え、えー……でも……」
「ウナ、テレビとかで激辛系の仕事来るかもだし、慣れときたいの」

 そんな嘘だと丸分かりな言い訳をして言い訳をしてもう一口食べる。
 でもせめて半分くらいは頑張ろう。

「タカハシくんは、醤油食べちゃって」
「で、でも」
「いーから! ウナのかっちょいい姿見ててね!」
「……うん」

 人間意外と本気で頑張れば結構できるらしい。
 ゲキカラ完食の字の書かれた写真を見ながらぼーっと思う。

「ありがとうね、ウナちゃん……その、すごい嬉しかったよ」
「……うん、タカハシくんの胃腸はこれで大丈夫?」」
「えっ、あっ……うん、大丈夫そう……ありがとう」
「ううん! また、タカハシくんが困ってたらウナに言ってね!」
「うん……」

 タカハシくんには色々お世話になってるからウナが今度は助ける番なんだ。そんなことを思いながらお水を飲んだ。

「からーい」

「お、どしたんすかタカハシ先輩。罰ゲームまだ後をひいてるんすか? 確か激辛ラーメンでしたっけ」
「いや、その……そっちじゃなくて、小学生に気を使わせて無理させてしまったことが申し訳なくて……」
「? 何があったんですがこの人」
「こいつは小学生の知り合いに激辛ラーメンを代わりに食べられて胃を痛めてる。実質罰ゲームだな」
「へー、どっちもいい子ですねえ」
「だなぁ」

2021年12月11日
2022年12月23日