思想の強い本棚

琴葉茜-大学生になったら自己啓発本を読む
水奈瀬コウ-大学生になったら小説をあまり読まなくなる

 昼休みは、大体水奈瀬コウと一つの机を共有しながら、昼飯を食べる。約束事とか、決まりというわけではなく、ただなんとなくなのだがそれが続いている。
 別に話すことなんてないのだが、この時間がけっこう好きだ。
 でも今日は珍しく目の前の男が口を開いた。

「今日さ、いつもの通学路に本の、中古販売みたいなのしてたんだよ」
「へー、こうたん?」

 そういうと、少し難しい顔をした。

「いや……なんか……思想が強くて」
「……あぁ」
「なんかこう、絶妙に興味がないっていうか、しかも値段設定も100円で、なんだろうな……ほんとに絶妙に買わないなぁっていうラインナップなんだよ……」

 そう言われてなんとなく本を思い浮かべる。新書とか、吊革広告で見るようななんだか語調の強いタイトルが思い浮かんでは、消えていく。

「かなしい話や……」

 同じくそういう本は全く興味ないこちらからすると期待して覗いたらそんなラインナップだととても悲しい気持ちになる。

「なんか、小説とかも一冊もなくて……」
「うわ……」

 思ったよりも酷かった。

「こう、なぜ〇〇は△△になったのか? みたいなのもあって」
「ほんまに、絶妙にいらんやん……」
「なんか、そそくさと退散した」
「そらしゃーない。みんなそうなる」

 適当な慰め。でも思ったよりもコウには合っていたらしくさっきよりも晴れ晴れとした顔で伸びをする。

「あー、気晴らしに図書館行こうぜ」
「おっ、ええやん。行こ行こ」

2021年12月12日公開
2022年12月08日更新