作家 不明 作品名 紲星あかり 制作年 2000年代 技法、材質 油彩、布 寸法(cm) 44×35
作家不明の作品だけを集めた企画展がある、と教えてくれたのは同僚だった。
別に絵がものすごく好きというわけではないのだが、なんとなく心が惹かれてしまった。企画展でも思ったよりもお値段はお安く、音が出ないように工夫された会場を歩いて回る。
控えめな説明に控えめな照明。なんだかこの作品は素敵かも、この絵はよくわからない、このブロンズ像は凄いな、これは何をモチーフにした彫刻だ? これは、あれは、それは。
じっくり見すぎて頭が疲れ始めた頃、とある絵を見つけた。 女の子が、ピースをしてはにかんでいる絵。
珍しくタイトルがある。
「き、きずな…ぼし…?あかり…」
「違いますよ、キズナです。紲星あかり」
「あ、あぁ。そうでしたか」
ここでは配布の電子パンフレット以外、小型端末の使用も制限されてるので。そう言おうとしてから思う。今のは、誰だろう。
絵の傍にあった説明から離れて周りを見渡す。絵に触れてないからを見ている監視員は遠くで他のところを見ている。他の客は、少し遠くにいて…。
「こっちですよ、こっち」
周りを邪魔しないようにとでもいうような小声が聞こえてきた。思わずその音の方向を探すとそこに、いた。
説明によると布に油彩で描かれたその紲星あかりは、絵の中の少女はしゃがんでこちらを見ていた。
「あなたはなんていうお名前なんですか?」
「…きょ、うまち。せ、せいか。京町セイカです」
あれ、あれあれ? これはもしかして何か、AR的なそれか? いや、電子パンフレットを即座に視界に出すがそんな説明一切ない。
混乱する私を他所に彼女は嬉しそうだ。
「そうですか、はじめましてセイカさん」
そう言いながら彼女は私に語りかける。
「改めまして、私は紲星あかりといいます!よろしくお願いしますね!」
こうして、奇妙な動く絵画と出会い、美術館からこの絵をこの絵の指示で盗み出すことになるのだがそれはまた、別の話。
2021年09月30日公開
2022年11月16日更新