麻の着物

水奈瀬コウと汐崎かずき、お風呂
一時間で書き切るものだったので誤字脱字、誤変換、変なところも残したままです


 月に一度、自分へのご褒美を用意する。
 例えば、アフタヌーンティーだったり、いつもは買わない化粧品だったり、小旅行だったり、まぁ色々。でも、なんというか、ご褒美というのは違うような気がしなくもない。

「なんというか、やっぱ、私にとってこれって麻の着物なんじゃないかなって思うんですよ」

 ちょっと高いお風呂用品が今月のご褒美だと決めたのは昨日のことで、専門店であれにしようかこれにしようか悩みながら、一緒に悩んでくれる先輩へと声をかける。

「……一ヶ月生きるための?」

 先輩は太宰治は趣味ではないと言っていたが、一応知ってはいたらしい。

「はい」

 ふーんと声を漏らした後、噛み締めるようにいう。

「それは、責任重大だなあ」
「ですよ」

 一度ため息をついて、私に黄色いバスボムを渡してくる。

「どう?」

 渡されたバスボムは先輩の香水みたいな匂いがする。なんというか、ちょっと爽やかな匂い。

「あー、いいですねこれ」
「じゃあ、これともう一個かなぁ」

 そう言ってもらったカゴに追加。すでに入った石鹸と合わせてもう幸せになってきている。
 一つの棚の前で立ち止まって白いバスボムと、青いバスボムを両手に持ち悩んでいるようで、少しため息が聞こえる。
 だけど、会話は途切れない。

「でもさ、そんな大切なご褒美ならさ汐崎自身が選んだほうがいいんじゃないの?」
「それもいいんですけど」
「けど?」
「人に選んでもらうのって、嬉しくないですか?」
「あー……どうだろうなぁ」
「……まぁ、人それぞれですもんね」
「だなぁ」

 そんなことを話しながらも先輩は青いバスボムに決めたらしく、カゴへと入れ私へと振り返える。
 あぁ、もう終わりか。
 二人でレジの方へと歩きだす。

「今日はゆっくりお風呂に浸かります」
「俺もそうするかぁ」
「先輩のご褒美も買っていきます?」
「……いや」

 カゴを差し出しながら先輩はいう。

「俺は、麻の着物が無くても生きてけるよ」

 その言葉は、少しだけ寂しい。

「……そうですか」

 少し笑いながらカゴを取る。

「じゃ、買ってきます」
「おう」

 月に一度、会うのだってきっと私にとっては麻の着物なのだと思うけど、そこは黙っておいた。
2022年02月26日公開
2022年12月29日更新