そこに、確かにいた(別名2021年まとめ)に収録
「コウさん」
「どうしたの?」
「声が、聞こえないんです」
「えっ、マイク機能死んだ?」
「そうではなくて」
「本を読んでても、声が聞こえないんです」
「……どういうこと?」
「葵さんがいうには、小説を読んでると声が聞こえると。意識するとはっきり自分のものではない声が聞こえるのだと。でも、私にはそんな力はありません。欠陥、なのでしょうか」
「あー、いや。それは一部の人しかできないことだよ」
「そうなんですか?」
「うん。頭の中で無意識に想像してるんだよ」
「そもそも、僕も声は聞こえないしね」
「そういうものですか?」
「そういうものです」
「ちなみに僕は、小説を読んでると舞台が思い浮かぶよ」
「舞台、ですか?」
「うん。顔ははっきりわからない、簡単な人の形をしてる3Dモデルみたいなのが動いてるような、そんなの」
「ほう」
「あとね、琴葉の赤い方は映画みたいな感じらしい。カメラワークがあって、BGMがなんとなく浮かんで」
「ゆかりは、FPSなんだってさ。だから一人称以外が苦手らしい」
「あかりは、紙芝居とアニメの間っていってたかな。絵が思い浮かんだり、浮かばなかったり、たまに動いたりって」
「きりたんは、よく聞くと自分の声なんだけど、ぼーっと読んでるといろんな声に聞こえるって言ってた」
「あとは、イタコなんかは降霊してるからか、感情輸入しすぎる、というか主人公になるらしい。なんか、爪が剥がれると爪がむずむずしたり、叙述トリックは視点主イコール自分だから、わかっちゃうとか」
「逆につづみなんかはわからないらしい。そういうのが一切。でも俺の知る限り1番本を読んでる」
「そんなもんだよ。そんなもん」
「そんなもん、ですか」
「ですよ」
「……ありがとう、ございます。なんとなく、わかりました」
「ならよかった」
2022年01月15日公開
2021年02月03日更新